マルセル・コンシュ


Marcel Conche (1922–2022)

Philosophe et métaphysicien français


現代フランスを代表する哲学者マルセル・コンシュは、わたしが科学者であった最後の時期に当たる2006年に、フランス語で語りかけてきた初めての哲学者として目の前に現れました。その時の第一印象は、問題を自分に引きつけて、ゆっくり、深く、論理的に考えているというものでした。それ以来、折に触れてその哲学を読むことはありましたが、本格的に取り組む時間をなかなか作ることができませんでした。最初の遭遇からすでに18年が経過していることと、日本ではほとんど読まれていない哲学者であることが見えてきたこともあり、これまでに綴ったものをまとめ、新しい試みを発信する場としてこのページを設けることにいたしました。よろしくお願いいたします。

(2025.1.28)



****************************************



◉ 日本で初めてのコンシュ作品『形而上学』が知泉書館から刊行されることになり、これまで避けてきた翻訳についての考えが少しずつ変化してきたように感じています。コンシュ哲学、すなわちコンシュという人間についての理解を深めるために、自らに向けて翻訳を続けることにいたしました。

1つは、まだ日本にいた2006年夏に知ることになったコンシュの著作を読むべく、その年の10月に手に入れた『無限に哲学する』(Philosopher à l’infini, PUF, 2005)です。これは英訳がSUNY Pressから Philosophizing ad Infinitum として2014年に刊行されています。

もう1つは、『形而上学』で議論されていた形而上学と道徳についてさらに議論を進めた『形而上学と道徳をめぐる新たな思索』(Nouvelles pensées de métaphysique et de morale, Les Belles Lettres, 2016)で、『形而上学』とのつながりがよさそうだと思ったからになります。因みに、この本は刊行直後の2017年1月に手に入れています。まだフランスにいるときのことでした。

これらの著作を折々に訳しながらコンシュ哲学について考えを深めていこうと考えています。その経過については、以下のページをご覧いただければ幸いです。(2026.10.14)




◉ 第14回ベルクソンカフェ(2026年11月21日開催予定)をマルセル・コンシュ著『形而上学』の第1章「哲学者になる」の読書会とすることにいたしました。興味をお持ちの方の参加をお待ちしております。(2026.9.20)


◉ マルセル・コンシュ著『形而上学』が2026年10月20日、知泉書館から刊行されることになりました。刊行の暁には手に取ってお読みいただければ幸いです。(2026.9.20)

◉ 第13回ベルクソンカフェでコンシュの哲学を読む(2026.3.4)

 マルセル・コンシュの哲学(3)『生きることと哲学すること』を読む ①


◉ 第14回カフェフィロPAWLで『生き方としての哲学:より深い幸福へ――アドー、コンシュ、バディと考える』の読書会をやり、その中でコンシュの哲学についても語り合った。(2026.3.11)


◉ 下記の本の英語版 Philosophy as a Way of Life: Toward a Deeper Happiness (ISHE Press) が刊行されました。Chapter 2 がコンシュの章となっております(p. 41–66)。お読みいただければ幸いです。(2026.2.20)




◉ フランス語を読み哲学するベルクソンカフェのあゆみをまとめた『生き方としての哲学:より深い幸福へ――アドー、コンシュ、バディと考える』(ISHE出版)を今月刊行する予定です。その第2章において、マルセル・コンシュの形而上学を論じております(p. 50–79)。



これはわたしの知る限り、コンシュに関する本邦初の本格的な論考になるのではないかと思います(コンシュについて触れたエセーはいくつかありますが)。この中に、現時点におけるコンシュ評がありますので、以下に引用いたします(p. 64–66)。

コンシュには声を荒らげたり、派手に訴えかけたりするようなところは全くない。静謐な空気のなかでしっかりと地に足をつけ、思考がどこかに逃げていかないようにすることだけに全神経を集中している、そんな風情がある。したがって、読む側も同じように静かな内的空間を準備し、厳密に思考するという心構えがないとコンシュの世界にはついていけないかもしれない。わたしが科学者のままであろうとしていたなら、全く反応しなかったであろう哲学者である。このように自らに誠実で根源的であろうとする抑制された思考にそれまで出会ったことがなかった。その静けさと誠実さに深いところで打たれ、それまで自分のなかにはなかったものが入ってきたという明確な刻印を残すことになった。その過程で、個別の知識ではなく、思考するとはどういうことなのかについて学んでいたことに気づいたのである。アドーに肖って「読む」ということを考えるとすれば、著者の思考過程(Gedankengang)を精確に、厳密になぞりながら追体験し、そこに論理のつながりの乱れがないかを確認する誠実な作業である、そう言いたくなるようなコンシュ体験であった。振り返ってみれば、そのことを教えてくれる哲学者は他にいたのかもしれない。しかし、わたしにとって、それはコンシュだったのである。そこに、偶然のなかに現れた必然を見ることができる。

 お手に取ってお読みいただければ幸いです。

(2025.11.5)


◉ 第12回ベルクソンカフェで、コンシュの哲学を読む(2025.11.5)

  マルセル・コンシュの哲学(2)『形而上学』「まえがき」と「プロローグ」を読む


◉ 第11回ベルクソンカフェでコンシュの哲学を読む(2025.3.4)

  マルセル・コンシュの哲学――2006年のインタビュー記事を読む――


◉ マルセル・コンシュの『形而上学』の翻訳と刊行に向けて(2024.11~2026.10)


◉ 第12回サイファイフォーラムFPSSでマルセル・コンシュの哲学について発表(2024.11.9)


◉ 刻印を残した二人の哲学者: ピエール・アドーとマルセル・コンシュ

  矢倉英隆『免疫学者のパリ心景――新しい「知のエティック」を求めて』

  (医歯薬出版、2022)p. 24–33

 

◉ マルセル・コンシュの『形而上学』を読む

  ブログ「二つの文化の間から」より(2021–2022)


◉ マルセル・コンシュ、あるいは哲学者の生活

  エッセイシリーズ「パリから見えるこの世界」より

  医学のあゆみ 263: 211–215, 2017


◉ マルセル・コンシュのインタビュー(Philosophie Magazine, 2006)

  ブログ「フランスに揺られながら」より(2006.9)