『免疫から哲学としての科学へ』





免疫という現象の本質に至る試みをまとめました

科学の成果の分析から始まり、哲学的省察に至る「科学の形而上学化」という方法を用いて免疫にアプローチいたしました

このアプローチは、自然の深い理解に至るための有効なやり方になると考えております

 『免疫から哲学としての科学へ』(みすず書房、2023年3月)

章立ては、以下のようになっております

お読みいただき、ご批判をいただければ幸いです


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はじめに

第1章 免疫学は何を説明しようとしてきたのか

 1.「免疫」という言葉、あるいはメタファーについて

 2.免疫学が確立される前に明らかにされたこと

 3.近代免疫学の誕生

 4. 新しい選択説の出現

 5.免疫を担う主要な構成要素はどのように発見されたのか

 6.免疫反応の開始はどのように説明されたのか

 7.クローン選択説に対抗する新しい理論的試み

 8.新しい理論的枠組みを生み出すもの

第2章 自己免疫、共生、そしてオーガニズム

 1.自己免疫

 2.微生物との共生

 3.胎児との共生

 4.共生が問いかける問題

 5.オーガニズムとは何をいうのか

第3章 オーガニズム・レベルにおける免疫システム

 1.ぼやける免疫システム内の境界

 2.オーガニズム全体に浸透する免疫システム

 3.情報感知システムとしての免疫

 4.内部環境、ホメオスタシスを再考する

第4章 生物界に遍在する免疫システム

 1.細菌の免疫システム

 2.植物の免疫システム

 3.無脊椎動物と無顎類の免疫システム

 4.免疫を構成する最小機能単位とミニマル・コグニション問題

 5.最古の認知システムとしての免疫

第5章 免疫の形而上学

 1.スピノザの哲学から免疫を考える

 2.カンギレムによる「生の規範性」から免疫を考える

 3.生命の本質に免疫があり、免疫の本質には規範性を伴う心的性質が包摂される

 4.免疫の形而上学が呼び込むもの、あるいは汎心論的世界

第6章 新しい生の哲学に向けて

おわりに

謝辞

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Ø 合評会が開かれました

● 第10回サイファイ・カフェSHE札幌(2023年10月21日)

● 第17回サイファイ・カフェSHE(2023年11月17日)

ご参照いただければ幸いです



Ø みすず書房のサイトとアマゾンでの紹介文

●「免疫は実証科学だけで解明できるのか――。免疫学者にして哲学博士(ソルボンヌ大学)が切り拓く、自省と創造力ある科学の可能性」


●「免疫学における30年以上の研究生活が終わりに近づいたとき、著者は大きな不全感を抱えていた。純粋な実証科学から自分は何を得たのか、免疫を理解したのか? 物理化学的には説明しきれない免疫の全貌に迫る回路のひとつとして、著者は哲学に向かった。本書はフランスでの学究生活の成果を踏まえた科学への提言であり、人文学と実証科学を縦横に行き来するスリリングな論考である」


●「免疫学における30年以上の研究生活が終わりに近づいたとき、著者は大きな不全感を抱えていた。長いあいだ科学の領域にいたものの、免疫というものの全体あるいは本質は何なのか、さらにいえば、科学という営みが持つ特質とはどういうものなのかという根源的な思索が欠落していたことに気づいたからである。この不全感を埋めるために、著者はフランスでの哲学研究の道を選んだ。免疫学が生み出す成果には哲学的問題が溢れているからである。しかし著者がそこで見たものは、科学的であろうとする哲学の姿だった。そして現代の科学一般はそもそも、哲学を必要としているようには見えない。

科学は解が出るよう自然に問いかける一方で、哲学は解が得られないにもかかわらず真理の探究に向かうという逆説的な営みである。そして科学がそのつど解を得て前に進むのに対し、永遠に開かれた探求こそが哲学であるといわれる。免疫という現象を理解するためにはその両方が必要ではないか。またそうすることは、科学と哲学が実り多い関係を結び直す契機となりうるのではないだろうか。

免疫の働きは防御だけではなく、実証科学が明らかにしたその姿を本書で追うことは驚きの連続である。そこへ哲学から渡された橋から見える眺望は、さらなる驚異と知的刺激に満ちている



Ø 哲学の劇場で紹介されました(2023年4月14日)




Ø 竹田扇帝京大学教授による書評「人間精神の根源的な問いへの回答―新しい生物学的認知の枠組みを提唱する」が『週刊読書人』に出ました(2023年5月12日)。


「生命をどのように認識するか」、という人間精神の根源的問いかけに対する一つの回答例を与えることに成功している。

 

要素還元主義…とどう折り合いをつけていくのかと沈思する時、本書は好適なプラットフォームを与えるものと思われる。 


「単なる生命科学論に堕さない優れた生命論である」との評価をいただきました。

深く読み込んでいただいたうえでの論評に感謝いたします。



Ø 図書新聞(2023年6月3日号)の巻頭書評に石井哲也北海道大学教授の論考が掲載されました。


本書は、免疫という現象の奥に横たわる根本原理を理性的な思惟で認識する。そして、新型コロナから日常に戻る今、社会、他者、自分を見つめなおす契機を与える書でもある。


新しい切り口から本書の特徴を紹介いただき、感謝いたします。