プロジェクト 2023






今年から、年初にプロジェクトを設定するというやり方を止め、年末にその年のまとめをすることにした

その方が自由に1年を使うことができるので、精神衛生によいと判断したからである

1年が終わって感じるのは、当初想定もしていなかったことが現れるので面白いということだろうか

今年は主に以下のようなことをやっていた


(1)新しい免疫論の刊行

昨年から編集作業を続けてきた『免疫から哲学としての科学へ』を3月中旬に刊行した

この本は、これまでにない視点から免疫を捉え直し、科学と哲学の関係についても考察を加えたものである

手に取ってお楽しみいただければ幸いである

ネット上にはあまり感想を見かけなかったが、週刊読書人図書新聞には書評を掲載していただいた

両紙には感謝したい



(2)免疫論の英語版の刊行準備

上記免疫論の刊行直後から、英語圏の読者はどのような見方をするのかを知りたくなり、英語版の刊行の模索を始めた

5月から8月にかけて英語に直す作業に当たっていた

幸いラウトレッジRoutledge)が興味を持ってくれ、つい先頃刊行に向けて動き出すことになった 

これから編集作業が始まるが、どのような発見があるのか、注意深く観察したい



(3)カフェ/フォーラムの開催

昨年秋に3年振りに再開したカフェ/フォーラムだが、今年も以下のようなテーマを取り上げ、春秋の2回開催することができた

春のカフェ/フォーラム

◉ 2023年2月25日(土) 第9回サイファイカフェSHE 札幌 
テーマ: アナクシマンドロスと科学的精神

◉ 2023年3月1日(水) 第7回ベルクソンカフェ 
テーマ: アラン・バディウの幸福論を読む(2)――幸福と反哲学――

◉ 2023年3月1日(水) 第9回カフェフィロPAWL
テーマ: アラン・バディウの幸福論を読む(2)――幸福と反哲学――

◉ 2023年3月4日(土) 第8回サイファイフォーラムFPSS
プログラム:
 1)矢倉英隆  シリーズ「科学と哲学」② ソクラテス以前の哲学者-2
 2)久永真市  遺伝子と個性
 3)市川 洋  「人間の基本的な在り方」と「科学の在り方」

◉ 2023年3月8日(金) 第16回サイファイカフェSHE
テーマ: アナクシマンドロスと科学的精神


秋のカフェ/フォーラム

◉ 2023年10月21日(土) 第10回サイファイカフェSHE 札幌 
テーマ:『免疫から哲学としての科学へ』で、免疫、科学、哲学を考える

◉ 2023年11月8日(水) 第8回ベルクソンカフェ 
テーマ:J・F・マッテイの『古代思想』を読む

◉ 2023年11月11日(土) 第9回サイファイフォーラムFPSS
プログラム:
 1)矢倉英隆  シリーズ「科学と哲学」③ ソクラテス以前の哲学者-3
 2)牟田由喜子  H・コリンズ『専門知を再考する』:専門知は市民社会にどのように有用なのか?
 3)木村俊範  日本のテクノロジーには哲学が無かったのか、置き忘れたのか?――一テクノロジストの疑問

◉ 2023年11月14日(火) 第10回カフェフィロPAWL
テーマ:プラトンの『饗宴』と神秘主義

◉ 2023年11月17日(金) 第17回サイファイカフェSHE
テーマ:『免疫から哲学としての科学へ』を合評する



(4)サイファイ研究所 ISHE の10周年

今年はサイファイ研究所ISHEの10周年に当たった

さらにこの活動の原点に遡れば、最初のカフェが開かれたのが 2011年11月なので、今年は12周年になる

因みに、この会の第1回から第4回まで名称は「科学から人間を考える試み」で、すでに懐かしい響きがする

この会は2013年、ISHE の設立に合わせて「サイファイ・カフェ SHE」に名を改め、先月、その表記を「サイファイカフェSHE」としたばかりである

その後、サイファイカフェSHEは札幌でも始まり、さらに、生き方としての哲学を考える「カフェフィロPAWL」(Philosophy As a Way of Life)、フランス語を読んで哲学する「ベルクソンカフェ」、科学者による科学者のための議論の場としての「サイファイフォーラムFPSS」(Forum of Philosophy of Science for Scientists)が加わり、現在に至っている

これまでは、どちらかと言うと内省的な面を強調してきたように見える

10周年を機に、これまで以上に外を意識すると同時に、現代的なテーマについても積極的に向き合いたいものである

今月に入り、当研究所の英語版がないことに気付き、大枠を作成した
ご覧いただければ幸いである


このように長きに亘って活動できたのも、偏に会の趣旨に賛同され参加された方がおられたからに他ならない

これまでに参加された皆様には、改めて感謝の意を表したい

今後もご理解、ご支援をいただければ幸いである